狐さんがおったわ
日付も変わろうかというころ。
アクセルも踏むか踏まずのちんたらちんたら、次の角を左にハンドルきればもう我が家。
そこで犬のようなそうでないような動物の姿が月夜の薄明かりにぼんやりと。
うん、犬とはちっとばかし違う。
どことなく華奢。尻尾はやや太目にみゆる。
おそらく狐だな。
こちらをに少し顔を向けたあと逃げるふうでもなく角を左に歩いて行く。
自分も後を追うようにゆっくりと。
そこでまた「なんでついてくるの」と言いたげにこちらを向く。
そこ家なんですよと黙語すると、狐さんはお隣の家の敷地にトコトコと姿を消した。
平地の松林の端が拓かれて住宅地にされたのがおおよそ40年前。
そこから十数年の少年時代はちいさな林や野原が身近にあるような環境であった。
しかしながら狐を目にしたことは一度もなかった。
ここらにも狐居るのか。
ぼんやり考えていると逆に見なくなった動物がいたことを思い出した。
犬と猫である。
近隣で犬を飼っているという家がひとつも思い当たらない。
皆飼わなくなった。
そして猫。
飼い猫も野良猫も目にしない。
子供もあまり外で遊んでいる様子無く、そういえば井戸端会議がされている気配もない。
まあ犬が居なくなれば狐が越してくることもあるかもな。
狐は寡黙。犬も猫もおらず。
人もおもてで語ることもない。
無職の中年も部屋で無言。かと思いきや、たまに独り言の習性がある。
狐もやべーおっさんがすんどるわと逃げてしまうかもしれない。
独り言を繰り出す分ブログを書くようにしよう。